経済学部3年藤江瑞彦くんの留学体験談
経済学部からは毎年数名の学生が、フランスの名門ビジネススクールHEC経営大学院(Ecole des hautes études commerciales 読み方は「アッシュウーセー」)に留学しています。ここでは現在、塾派遣交換留学制度を利用してHECに留学中の経済学部3年藤江瑞彦くんのインタヴューを紹介します。
どうしてHECとの交換留学を志望したのですか?
私は大学院への進学を考えていて、学部生のうちから留学を経験したいと考えていました。また、2年生の時に履修した授業の影響もあり、経営学の側面から経済を見てみたいと思っていました。経済学、経営学の中心は英米にありますが、あえてヨーロッパへの留学を希望したのはより幅広い視野を持ちたいと思ったからです。なかでもHECに決めた理由は、経営学を学ぶ環境が整っていることに加え、国際的な視座を持つことができること、キャンパスのみならずフランスという環境から教養を身につけることができると考えたからです。
ただ経済学を経営学に適用していくのは、思った以上に難しいように思います。経済学が恋しくなり、最近はソルボンヌ大学の経済学の講義も聴講しに行きました。HECで経営学、ソルボンヌ大学で経済学が学べたわけで、これはフランスに留学して意義のあったことだと思っています。
留学までの手続きでなにか困ったこと、たいへんだったことはなんですか?
フランスの入国手続きがやや煩雑で、滞在許可の取得には時間がかかりました。でも、これは単なる行政上の手続きではなくて、きっとフランス社会へ溶けこむためのイニシエーション(通過儀礼)なんだと思います。ただフランスでの生活には楽しいこともたくさんありますから、入国手続きくらいでへこたれていてはいられません。
あと、フランスでは多くのことが交渉可能なので、こと細やかに決められた紙を見て頭を抱え込むよりは、思い切って人に頼んでみるほうが良いように思います。
HEC の第一印象、また学校の雰囲気はどうですか?
キャンパスのあるJouy en Josasの駅に着いたときには、「遠い所に来てしまった」という印象を受けました。学校はHEC Parisと名乗っていながら実はパリにはなく、パリ郊外25kmのJouy en Josasという小さな町にあるんです。パリからは電車で1時間半ほどかかります。キャンパスは森の中にあり、そのなかで、学ぶ、食べる、寝る、という生活が完結しています。勉強に集中するにはいい環境だという人もいますし、退屈だという人もいます。個人的には、平日は勉強に集中して、休日は出かけて気分転換する、というメリハリがついてよかったと思っています。
またHECは大学でなく、いわゆるビジネススクールです。実業界の人材育成を目的としています。ただ、ビジネススクールといっても米国のように起業を目指すというよりは、より大きな会社、より良い会社に就職したいという学生が集まっているように思います。このあたりは日本ともよく似ていますね。あるいは就職に関する価値観は慶應の学生とも似ていると感じます。ただ、パリの他の学校で学んでいる慶應からの留学生と話していると、どうやらこれはHECに特有のことのようです。慶應の学生同士で時々集まって、思いきり日本語を話して、情報共有できたのは、HECに特有のこと、フランスに特有のことを見分ける上でとても有意義だったと思っています。
HEC での授業でたいへんなのはどんな点ですか? 留学してよかったと思える点は?
日本の大学での勉強は講義形式でinput中心の学びであるのに対して、HECでの勉強はディスカッションが中心でoutputのための学びだと思います。多くの科目で「エクスポゼ(exposé)」といってプレゼンテーションがあり、その中では提案なり提言なり、かならずoutputを求められます。
ほとんどの授業でグループワークがあります。時間を決めて、グループみなで話し合い、プレゼンテーションを組み立てていくのは骨の折れる作業です。このときはもちろんフランス人や他の外国人と組むことになり、仕事のやりかたに「お国柄」が出るので興味深いです。見ているとフランス人はとても要領がよいことに気づきます。課題を読んできていなくても、パッと見て「ここはこういうことネ」と見当をつけてしまうのは思わず感心してしまうほどです。彼らのプレゼンテーションが、きちんと構成されているのも驚きです。また、スライドのデザインが凝っているのはさすがフランスといったところです。
授業では米国の学校が書いたケーススタディを扱うこともありますが、それでもフランス式のものの見方に基づいて議論していくので、時に米国や日本のそれとは異なるエートスを見出すことができ、ひじょうに面白いです。今回、未曾有の金融危機を外国で経験するという貴重な体験をしましたが、苦労しながら新聞を読んでみると、危機に対する態度にもフランス的なものを感じます。
勉強以外ではどんな楽しみがありますか?
ありがたいことにパリではオペラやコンサートの公演が豊富で、またチケットが学生向けに安く提供されています。それを利用して芸術や教養に触れるのが楽しみです。これはフランス留学の欠かせない魅力だと思います。最近は5ユーロの立ち見席でオペラを観に行っています。日曜日のマチネーを楽しみに、平日は集中して学校の課題を終わらせるようにしています。
これからHEC への交換留学を考えている経済学部の学生にアドヴァイスを。
経済学と経営学は似て非になるものです。かなり具体的なアドヴァイスになってしまいますが、商学部の経営・商学系の科目を履修すれば知識が経済学にそのまま活かせますし、経済学部では契約理論やゲーム理論など応用ミクロ理論を勉強しておくと経営分析をする上でもとても強みになります。日本でこうしたinputを積んでおくと、HECで求められるoutputの勉強が実りあるものになると思います。
またHECの中にいる限り、英語だけでも生活は可能です。ですが、せっかくフランスに留学するのだから、ぜひフランス語を勉強して、フランス社会に切り込んでいかなければ損だと思います。私もまだまだ力不足ですが、フランス語の新聞を辞書を頼りに読んでいます。それに、いきなり英語で話しかけるよりも、拙いフランス語で話しかけてから英語に切り替えた方がフランス人も快く接してくれますよ! ぜひフランス語のできる経済学部生にHECに来てもらいたいと思います。Bon courage !
慶應からの留学生とシャンゼリゼで年越し
仲良くなった友達と
寮の友達と―お別れ会
部屋の様子(入居時の写真なのでまだ何もありません…)
校舎
雪が降りました。パリよりも3℃は低いと思います
教室
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