98年経済学部卒、島森浩一郎くんからのススメ
卒業生へのインタヴュー第一回目は、経済学部を卒業後、日本とフランスの芸術家たちとの架け橋になる仕事をされ、現在はある会社で世界遺産検定の企画に携わっておられる島森浩一郎くん(98年卒)にお願いしました。日本の企業に就職しても、フランス語を使用する機会はあるのです。
現在のお仕事の内容を教えてください。
私は経済学部を卒業後、会社勤務を経て北海道大学大学院に入学しました。修士課程在学中に、ある留学プログラムの奨学生として、フランスのストラスブールに1年半留学しました。帰国後は芸術文化系の財団に勤務し、フランスやベルギーのヌーヴォー・シルク(サーカスやダンス、演劇を融合した舞台芸術)公演や、ベルギーやスイスの教授陣を招聘してのバレエセミナーの運営を担当しました。2年前に転職し、現在は世界遺産検定の企画に携わっています。
お仕事ではどのような場面でフランス語を使っていますか?
前の職場では、フランス語圏の人々とほぼ毎日メールのやりとりをし、彼らが来日してからは主催者兼通訳として、直接のコミュニケーションを通して舞台公演を運営したり、こちらからスイスへ交渉に行ったりということがありました。
そこでの任期が終わり2年前に現在の会社に転職しましたが、今は直接のコミュニケーションは減り、一方でユネスコ(パリに本部がある国連組織で世界遺産を管理する)の発行物やHPなどのフランス語の文章を読むことが多くなりました。
フランス語圏で生活、お仕事をするのは、日本とはどういう点が違いますか?
留学時代に日本と違うと感じたことは、フランス人は日本人よりも自分たちの権利を守ろうという意識が非常に高いことでした。労働環境や生活環境を守るためにデモをしたり当局と交渉したりして、自らの力で権利を勝ち取るということです。労働者だけでなく学生も、政治への参加意欲が高く、国際情勢にも敏感です。一方で自分たちの権利を守ろうとするあまり、役所や商店などでの事務手続きで融通がきかなかったり、時間がかかったりという不便な面もあります。しかしこれも、最近ではずいぶん改善されてきているようです。
フランス語圏の人と仕事をしていると、自分の考えをなかなか曲げない、頑固なところが多いとも感じるのですが、こちらの考えや主張をちゃんと伝えたうえで、一緒に妥協点を探して合意すると、その実現のために一生懸命にやってくれるので、信頼がおけます。大切なのは人間的な共感を伴う相互理解の度量だと思います。
第二外国語でフランス語を学ぶ必要性はどんなところにあると思いますか?
私がストラスブールに留学していたのは、ちょうどイラク戦争の時期でした。ご存知の通りフランスをはじめとする欧州諸国の多くはアメリカの単独主義に反対したのですが、私を含め日本人の留学仲間のほとんどが、日本の国際政治における存在感の無さ、自己主張の無さ(すべてアメリカまかせ)に落胆しました。フランスのニュースでは、日本がこう発言した、などという話題は一切登場しなかったのです!
日本人にとっての第一外国語は英語ですが、国際社会で伝統的に強い力を持ち、欧州内はもちろんアフリカや中近東諸国に対しても影響力を持つフランス語を第二外国語として学ぶことは、一方向ではなく多方向から世界を見つめ、視野を広く持つことに繋がるので、将来国際的に活躍したい人なら必須のツールだと思います。
また私は学生時代、ドイツ語も勉強しました。結果として大陸欧州の二大言語を勉強したことは、今振り返ると非常に有意義でした。大学院でEUに関する修論を書く時、仏独両方の原文を読むことができましたし、留学先が仏独国境のストラスブールだったこともあり、双方の視点から欧州統合の現場を見ることができた気がします。そもそもストラスブールに留学していた欧州各国からの留学生の多くは、母語とフランス語、英語に加え、あと一言語は理解することができましたから、日本の学生も、英語以外に少なくとももう一言語は得意になっておくべきでしょう。
慶應経済学部の現役生、経済学部を志望している高校生にメッセージを。
経済学部は慶應義塾の看板学部だと言われますが、そのとおりだと私も思います。それは教授陣のレベル、伝統やOBのパイプなどはもちろんですが、経済学そのものを理解するために欠かせない周辺領域の学問の授業(「教養」といわれるもの)が充実している点も重要だと思います。例えば、持続可能な発展を実現するための環境学や生物学、グローバルな視野を持つための比較文化学などのカリキュラムが充実しています。そして何より、外国語教育に力を入れている点です。既に述べたように第二外国語をマスターすることは今後の社会で欠かせないことですが、経済学部は語学力を磨きたい学生に多くのチャンスを与えてくれます。
自分自身の興味からいずれかの言語を選択し、学習に打ち込んでみると、きっと世界が広がり、人脈も広がると思います。サマースクールなどで1ヵ月程度の語学留学をするのもお勧めです。私が留学したのは26歳のときでしたが、20代前半で欧州のどこかに長期滞在し、その国の人だけでなく、様々な国籍の同世代の若者と交流し意見を交換し合っていたら、自分のものの見方がもっと豊かになり、将来の選択肢ももっと増えていただろうと思います。
そのなかでフランス語は、世界を多方面から客観的に見つめるためにはうってつけの国際語です。勉強してみると発音は英語よりも容易ですし、フランス語ができれば、欧州内の広い地域を楽に旅行できます(多くの観光地のインフォメーションではフランス語が通じ、フランス語のパンフも用意されていますし、ラテン語圏の国なら標識や店名も綴りから何となく類推できます)。
自分自身の世界を広げてくれるフランス語に、経済学部の第二外国語の授業で、ぜひ出会ってみてはいかがでしょうか。
スイスのローザンヌ国際バレエコンクールに出張したときにお会いしお話をした、パリ・オペラ座の元エトワール、モニク・ルディエールさんと撮ったもの
ベルギーのヌーヴォー・シルク・カンパニーのメンバーを、オフの日に(彼らの希望で)厳寒の小樽運河に連れて行った時の写真です
フランスのヌーヴォー・シルク・カンパニーとの舞台打合せの場面
現職場ではユネスコの資料を参照しながら、世界遺産検定の企画を立てています
03年経済学部卒、濱野正樹くんからのススメ
インタビュー第二回目は、経済学部を卒業後、現在はフランスのレンヌ第一大学で経済学の研究を続けている濱野正樹くん(03年卒)にお願いしました。経済学とフランスとの関わりでたいへん興味深いお話を聞くことができました。
慶應義塾大学 総合サイトCopyright (C) Graduate Schoolof Economics, Keio University. All rights Reserved